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コラム18
ホリスティックコンディショニングからみた、指導現場の問題点
はじめに
本稿の3回シリーズは、『コーチングクリニック』誌の2007年6月号から8月号に連載されたものである。連載するに当たって、本稿の内容を一読して、編集長が掲載を即断したわけではない。
当初は、このような内容の原稿を、はたして掲載して良いものか否かで迷っていたという。例えば、第1回目では
「ワールドカップに出場した日本人選手には、芝生や給水液に反応して、軸がブレている選手がいた・・・」
という表現がある。
これなどは、ホリスティックコンディショニングでは日常的な表現であるが、世間一般の方にとっては、
―――そんなバカな、信じられない!
というリアクションが率直なところであろう。そのようなものを全国誌に掲載してよいのか、という思いが、編集長にあったようなのである。
私は、「誰か選手を連れて来ていただきたい」と提案した。結局―――
あるサッカー日本代表選手をエネルギー転写された編集長自身が、芝生によってまったく抑制弱化してしまう現象を体験することになった。
コーチングクリニック誌の編集長は、このときのことを自らのブログに書き込まれている。
「衝撃的な内容であったので・・・確認しに行った」
そして、ホリスティックコンディショニングを
22世紀のコンディショニング―――
と、表現していただくことになった。
しかし、実際に雑誌に掲載するのは、広告宣伝を依頼しているメーカーや販売店などの問題がある。その点を考慮して、私自身がセーブした表現にとどめている箇所もあった。また、意図的に穏やかな表現に変えた箇所もあった。
本稿の3回シリーズでは、ホリスティックコンディショニングにおける様々な問題の一端を、原文に忠実にして再現したものである。
ホリスティックコンディショニングからみた、指導現場の問題点
その1:身体機能を低下させるもの
ホリスティックコンディショニングは、アスリートから半健常者まで、様々な方を対象として、多角的な観点からのアプローチを行っているが、基本的なことは
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生体エネルギー循環を正常に機能させるには、体軸を整えなくてはならない。 |
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体軸が崩れていると、パワー発揮能力が低下し、
十分な健康体を保持することができない。 |
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ということに、集約される。
体軸を整えるには、それを安定させる十分な神経‐筋の機構が、身体に備わっていることが前提となる。そのため、
◇ 他動的なアプローチに終始するのではなく、自動運動(自らの意思で筋収縮を行う)が必要となることから、ワークアウトを実施する運動指導の現場での活用を、主体としている。
さて、指導現場においては、まったく気づかないまま放置されている問題が少なくない。その中でも、見過ごすことのできない、体軸を崩す要因のいくつかを指摘しておきたいと思う。
体軸を崩す要因
ホリスティックコンディショニングに関わる者にとっては常識であるが、一般的には、ほとんど気づかない体軸を崩す原因がある。
体軸が崩れていれば(ほぼ大多数の方が対象となる)、まず、そのアスリートなり半健常者なりが、身に付けている「モノ」を、その原因として疑うことである。
根本的な原因というと―――例えば、肩の痛みの根本的な原因は、「足・足関節の不正に由来したものである」 「仙腸関節が変位しているので、そのために肩関節にストレスがかかってしまうので、まず骨盤の機能障害を正さなくてはならない」などの指摘は、従来から繰り返されている。
それはそれで間違いないのであるが、ここで対象とすることは、
「では、なぜ足・足関節の不正が生じてしまうのか?」 「なぜ、仙腸関節が変位してしまうのか?」
という、さらに根本に関わることなのである。
根本的な原因のひとつ
実は、この「真の原因に対処しないと、完全なる体軸の確保は不可能である」と言い切れるほど、これは根本的なテーマとなる。
通常、一般人よりも高度に訓練されたアスリートは、かなり高い確率で体軸が整っていると考えられる。それは、身体をサポートしている筋などの機能がしっかりとしているので、軸が乱れにくいことは確かである。しかも、大きな大会に焦点を合わせて、そのために万全のコンディショニングで試合に臨むのであるから、当然体調も極めて良好である。
だが、視点を「本当にベスト・コンディションで臨んでいるか否か」
という、ハイ・レベルでの体軸確保という観点で捉えると、たとえトップ・アスリートといえども、様々な問題点が浮き上がってくる。
一例を挙げると―――先のドイツで開催されたサッカー・ ワールドカップにおける日本の敗退の一因として、選手の体軸の崩れを指摘することができる。これについては、各講習の場で、「ホリスティックな見地からみたコンディショニング分析」で指摘してきたことであるが、日本選手11名のうち、5名の選手がグランドの『芝』に反応して、体軸を崩す要因となっていた。
小さなことであっても、10キロ以上の距離を走り回るサッカー競技の場合、このことは後半のスタミナロスに直結する。また、外傷・障害の誘発要因となってしまう可能性も拡大してしまう。
画面を見ていれば、試合の後半になると、選手の運動能力が極度に低下してきたことは、誰がみても明らかであった。問題は、その疲労は、「コンディションの不良」「心肺機能の低下」などの一般的な判断材料だけで導き出すのではなく、
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外気温に、体液が複合してマイナス反応を起こす特性が在る選手。 |
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芝そのものにマイナス反応を起こすだけでなく、摂取したスポーツドリンクと芝が複合してマイナス反応を起こす特性が在る選手。 |
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などがいたことを、関係者は知らなくてはならないであろう。
だが、通常のコンディショニングでのアプローチでは、このことは理解されないと思われる。理解されないから、そのような問題は今後も放置されることになろう。
私が関わったサッカー選手の多くが、この問題を抱えていた。もちろん、本人はまったく自覚症状はない。だから問題の根は深いのである。
ホリスティックコンディショナーがみれば、
「体軸が崩れている」ことが感知されて、「何が原因となっているのか?」と、そのネガティブな要素を排除して、傷害発生率を低下させることができる。
なによりも、よりパワーを発揮できるコンディショニングに導いてくれることになろう。
同様に、42.195キロを走るマラソン競技などでも、このことは顕著に現われる。体軸を崩す要因があると、スタート時では軸がしっかりととれて、非常にコンディションが良い状態であっても、途中からネガティブなモノへの反応が増加すると、体軸がどんどん崩れ始めて不調に陥ってしまう。
例えば、高橋尚子選手が久々に走ったマラソンで、予想外の低調な結果に終わったが、画面で見ている限り、スタート時から軸はとれていた。レース後のコメントや、評論家の多くの指摘も肯けるものであったが、後半になってマイナスのモノが反応して体軸が崩れてしまったことに気がついた方は、少なかったのではないかと思われる。単にコンディショニングの失敗ということで片付けられない問題が、様々な競技大会やトレーニング現場に埋没されている。そこで今回は、『マテリアル』に焦点を絞って、この問題を取り上げてみようと思う。
足・足関節に影響する要因
「足」や「足関節」の機能障害は、アスリートであれば間違いなく90%以上の方が抱えている問題である。だが、多くの方は、機能障害が在って、体軸を崩す要因となり、パワー低下を来たしていることに気づかない。
この観点から大相撲をみてみると、横綱朝青龍は体軸が崩れず、両足がガッチリと土俵を噛んでいるが、それ以外のほとんどの力士は、大関陣も含めて片足が土俵面を掴んでいないことが解る。足裏が、土俵面を掴んでいる体軸と、そうでないときの身体のパワー発揮能力の相違が、画面を通して伝わってくる。
さて、足・足関節の不正は、何が原因となるのか。当然、全体重が足裏にかかるので、物理的な問題は生じるであろうが、足裏にはご承知のように全身に関わる反射点が存在し、足趾には東洋医学でいう重要な各経絡が走っている。この足機能に関わる生体エネルギーの流れを阻害すると、その影響は頭頂まで及ぶことから、人体機能にとって重要な部位であることは、疑いない。
そして―――問題はここからであるが、生体エネルギーの流れを阻害する要因として、きわめて多いのが、
「靴下」と「シューズ」
である。
著者が指導したアスリートでは、およそ70-80%の確率でこの問題を抱えていた。一般人でも、この問題は多い。ある競技チームでは、ほぼ全員がこの問題を抱えており、ジャンプ力低下などを呈していたこともある。
ただ、ジャンプ力低下などは、様々な要因が反応している結果であり、その中の要因の一つとしてとして、「靴下」や「シューズ」があるのであって、ジャンプ力低下の主要な原因であると断定するものではない。ただ、走力やジャンプ力などは、アスリートの基本的資質に関わるものなので、この問題は看過できないであろう。
身体機能における「靴下」や「シューズ」のマイナス反応をどうのようにチェックして、どのように対処したらよいのかを、具体例を交えながらみていきたい。
写真1は、「靴下」「シューズ」に機能低下の問題を抱えているアスリートの一例である。体軸が崩れているのが、お解かりいただけるであろうか。
写真2は、「靴下」「シューズ」の問題を解消した直後のものである。
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写真1
靴とソックスに反応して、体軸が崩れている状態。
この時点では、100kgのスクワットを行なうと、膝―腰などにストレスがかかり、 正常なフォームで行なうことができなかった。 |
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写真2
靴とソックスのマイナス反応を除去した直後の状態。体軸が正常に回復して、正常なフォームでスクワットを行なえるようになった。 |
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ホリスティックコンディショニングに習熟してくると、このあたりの問題が瞬時に判るようになる。コンディショニングは、ホリスティック(総合的・包括的)な観点から捉えるように訓練する必要がある。それは、指導現場でアスリートや一般人の体軸を崩す要因として、いかにパワー低下を来たしているかが身をもって体感すると、改めてそれを排除するアプローチの必要性を、認識させてくれることになろう。
(チェック方法)
① 正常な大腰筋を検査筋として用いる場合で説明する。筋力がしっかりと入っており、抑制・弱化反応がない、つまり、正常な側の大腰筋を見出す。通常、大腰筋は、上部筋線維と下部筋線維で異なるケースが多く、上部なら上部の筋線維に適合する角度にする。この場合、片側の脚を肩幅よりも広めに開いたポジションでチェックするとよい。このとき、素足で検査をすること。(写真3)
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写真3
大腰筋を素足で筋力テストする。正常に力が入る。 |
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② 正常筋を見出したら、手に「靴下」もしくは「シューズ」を持って再度、同様の大腰筋検査を行う。
「靴下」もしくは「シューズ」に問題があれば、筋力は弱化する。すなわち、その「靴下」もしくは「シューズ」を身に付けて運動することは、何らかの抑制反応が現われるということを意味している。(写真4)
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写真4 手に靴を保持して、 大腰筋をチェックする。抑制弱化して、力が入らないことが判る。 |
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註:手馴れてくると、「靴下」「シューズ」を身に付けたままで、大腰筋の筋反射(反射的な筋抑制・弱化反応)で、「靴下」あるいは「シューズ」の問題を探り出すことができる。
この検査から、次のことが指摘される。
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その「靴下」もしくは「シューズ」を身に付けて、ランニングすると、当然股関節屈筋群の筋機能は低下する。つまり、走力が落ちる。 |
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同様に「大臀筋」で検査しても良い。マイナス筋反応を示す物質には、基本的に全身の全ての筋群が機能低下を示すので、股関節伸筋群にも何らかの抑制・弱化をもたらすので、走力やジャンプ能力が低下することになる。 |
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この問題は、全ての運動動作に関わることなので、スクワットやパワー・クリーンのみならず、ベンチ・プレスの挙上も低下させる要因となる。 |
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参考までに―――
「靴下」にマイナス反応を示す方は多いと述べたが、「シューズ」の場合は、足底板に関わる問題が極めて多い。
著者は、高価なオーダーメイドのシューズ(足底板)を過去に幾人もチェックしたことがあるが、正常に機能しているものは皆無であった。つまり、足部機能障害を修正してから、オーダーメイドの足底板を作成したのではないために、そのシューズを履く事で軸の崩れを助長し、さらに足底板の物質にマイナス反応を示してしまうと、さらに軸ぶれを増すことになってしまうからである。
(修正方法)
では、これらの問題を修正するには、どうしたらよいのであろうか。
公認ホリスティックコンディショナーのレベルであれば、まず体軸の崩れは容易にチェックすることができるので、身近にいる有資格者を通じてチェックすることを薦める。
そのマイナス反応を消去するには、ホリスティックコンディショニングでは、『デッド・リフト』を行うことを推奨している。これが、通常のケースでは、最も容易で的確に反応させることができるからである。
(体軸デッド・リフト)
正確なポジションで両足裏に荷重したフォームで、極めて軽いウエイトで行う。マイナス反応を示すモノを保持して、正常な体軸を確保できる運動フォームで行うことで、『脳』に適正な刺激を与えることで、正常化することが可能となる。(写真5)
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写真5
靴を手に保持して、正確な動作でデッドリフトを行なう。体軸を整える反応を脳にインプットすることで、 靴によるマイナス反応を消去することができる。 |
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著者は、単にその物質を消去するだけなら、『脳反射』(詳細略)で、わずか数秒で対処できる。また、生体エネルギー循環を確保した適正なフォームで行うエクササイズであれば、鍛錬度の高い方ならアーム・カールであろうがショルダー・プレスであろうが、そのエクササイズを通してマイナス反応を消去することが可能である。
(つづく)