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コラム19
ホリスティックコンディショニングからみた、指導現場の問題点 その2
その1:身体機能を低下させるもの(その2)
前回は、体軸を崩し、機能的なパワー低下をもたらす要因の一つとして、「靴下」「シューズ」の問題を取り上げたが、同様にほとんど意識されることがないにもかかわらず、実際には体軸を崩す誘引として多発している問題に、焦点を合わせたい。
それは、健康食品を含む『飲食』に関わるものである。
口から入る全ての「モノ」を対象にすると、あまりにも煩雑になり過ぎるので、 ここではアスリートから一般人の多くが、当然のように摂取している「健康食品」「サプリメント」に話を絞り込んでおきたい。
なぜチンニングができないのか
指導現場でよく目にするのが、
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チンニングが苦手である。広背筋を主働筋として稼動させるフォームで行えず、
上腕屈筋群主体のフォームに陥ってしまう。 |
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クローズ・グリップで行うプッシュアップを、繰り返して行うことができない。 |
などである。
このようなことは、指導者の立場であれば少なからず目にしていよう。それを、単に「筋力が弱い」「体調が悪い」からである、と片付けることのできない問題が含まれていることが多い。
まず、チンニングであるが、大多数の女性は、自分の身体を懸垂で持ち上げることができない。それは、筋のマスに関わる絶対筋力が小さいからに他ならない。そこで女性の場合には、写真1のポジションで行わせると(このとき、肩甲骨をお互いに引き寄せるようにする)、広背筋を十分に働かせることができる。
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写真1
ヒップを持ち上げたまま、胸をバーにつけるように上体を引き上げる。 |
だが、『プロティン』を摂取すると、多くの方に広背筋が抑制・ 弱化するマイナス反応が示される。アスリートなどでは、運動中にプロティンを摂取することが、効率的で効果があると思われているが、このようなマイナス反応を示してしまうケースでは、運動後に摂取するほうが賢明である。
クローズ・グリップ・プッシュアップについては、多くの方が同様に抑制・弱化を示す。この場合、上腕三頭筋抑制・弱化がその問題となる。
つまり、チンニングはプル系エクササイズの代表的筋群強化運動であり、プッシュアップはプッシュ系エクササイズの代表的筋群強化運動のひとつであることを考えると、このような問題を気づかないまま抱えている方は、一生懸命にエクササイズを行っていながらも、十分なトレーニング効果をあげられない、というジレンマに陥っていることが理解される。
サプルメントと運動機能抑制
プロティンを摂取すると、メーカーの製品にもよるが、『膵臓』にマイナス反応してしまう方が、予想を超えて多いことに気づかされる。
付け加えると―――マイナス反応は人によって異なる。例えば、プロティンに含まれる何らかの成分を、身体が好ましくないと判断したものは、肝臓や腎臓のいわば解毒作用が働くからなのか、この臓器にストレスが蓄積されることも多い。この場合は、『大胸筋』や『大腰筋』に典型的な抑制弱化反応が現われて、ベンチ・プレスの挙上能力低下やランニング障害を引き起こすことが、頻発する。
さて、膵臓にマイナス反応してしまうと、なぜ広背筋や上腕三頭筋のパワー低下を来たしてしまうのかということであるが、東洋医学でいう脾経(脾臓と膵臓に関わるエネルギーライン)を通して、膵臓に対応する筋―――すなわち、「広背筋」「上腕三頭筋」に連鎖して、抑制・弱化反応を呈してしまうからである。
巨大なニーズ
わが国では、およそ6人に一人が『糖尿病系半健常者』であるとの指摘があるが、この問題(膵臓などに関わる機能低下)は、今後のフィットネス界における大きなテーマとなろう。というのは、巨大なニーズがありながら、十分に対応でき得るシステムが確立されていないからである。つまり、糖尿病系半健常者へのアプローチにおいて、運動指導の有効性は実証されているが、どのような運動でどの程度の強度で行うのか、という運動プログラムの問題だけでなく、何が関連臓器にストレスをもたらしているのか、あるいはその抜本的な対応策はどうすべきなのかが、未だ確立されていないと思われる。
そのためには、
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体軸を整えることで、本質的な身体機能を賦活させる。そのために、「筋バランス」「関節機能」を正常化する。 |
◇ |
膵臓にストレスとなる物質を排除する。もしくは、ストレスとならないように、身体を再教育する。 |
という観点から捉えないと、ある人には有効な結果を示しても、ある人にはマイナス反応から全身へのマイナス筋連鎖・骨連鎖を生じてしまい、対象者によってはアンバランスな結果を招いてしまう可能性がある。
この問題は、詳細を論じていると、あまりにも専門的になり過ぎるので割愛するが、医療機関で明確な診断名が下される以前の、機能障害は起こしていても未病の段階で、『適度な運動』と『正常な体軸の確保を図る』ことが、恐らく最も必要な対応策であると思われる。だから、この問題は医療機関で対応するだけでなく、フィットネス関係における大きなソフト(対応システム)が、今後は要求されよう。潜在的な対応者は巨大であり、フィットネス間連におけるニーズは、きわめて高くなろう。
アプローチの一例
ここでは、専門的なアプローチには触れずに、簡易なチェック方法と、やはり運動指導の現場において簡易に導入しやすい処方例を、紹介したい。
(チェックその1)
立位で、広背筋の抑制弱化の有無をチェックする。(写真2)
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写真2
内旋させた手首を、外方に引き出すことに抵抗させる。
広背筋抑制弱化では、外側に開いてしまう。 |
◇ 上肢を内旋させて、肩を固定する。他方手で、内旋させた手首を保持する。
◇ 手首を外方へ引き離すように力を加えて、それに抵抗させる。
◇ このとき、手首を保持している手を通して、「筋の抑制弱化」を感知する。
◇ 多くのケースで、片側の広背筋は弱化するが、他方は通常筋力は強い。
つまり、両側に抑制弱化反応がないことを確認しておく。
(チェックその2)
◇ 次に、『プロティン』あるいは他の『健康食品・サプリメント』を口の中、もしくは手の中に保持させる。これで
◇ 広背筋の筋反射テストを、同様に行なう。
◇ このとき、両側で抑制弱化を感知したら、何らかの機能低下が膵臓関連にあることを疑う。
◇ この場合、『口』もしくは『手の中』にあるモノは、身体に何らかの抑制弱化反応を引き起こす物質が含まれていると解釈する。
註:ホリスティックコンディショニングに習熟すると、直接臓器にその物質を反応させてチェックするので、その精度はさらに増してくる。
また、単に『広背筋』や『上腕三頭筋』の筋反応をみるのではなく、抑制弱化反応を、特有の臓器や特有の椎骨、あるいは椎間板にストレスを及ぼしていることなども、数秒で感知できるようになってくる。
(対処方法)
対処には、前回紹介した『体軸デッドリフト』を行うことを薦める。『口』もしくは『手の中』に、原因となる物質を保持して行うとよい。これが最も簡易に行えると思われる。
また、周囲に、習熟したホリスティックコンディショナーがいれば、数秒間で対処してもらえるであろう。
さて、機能障害が見出されたら、運動プログラムを実施する前に、次のようなアプローチで胸椎を整えるようにするとよい。他動運動ではないので、自分自身のトレーニング実施前の、調整運動として活用して頂くとよいと思われる。
(実施方法)
・ ベンチ上に、ボールか半円型のストレッチポール(ペットボトルにタオルを載せれば代用品となる)をセットする。
・ その上で軽量のダンベルを両手に持って、プルオーバー・スタイルのエクササイズを、深呼吸に合わせて次のように行う。
◇ 上方にダンベルを保持して(スタート・ポジション)、大きく胸に息を吸い込みながら、頭上にダンベルを下ろしてくる。(写真3)
写真3
◇ 胸郭が大きく開いたフィニッシュ・ポジションで息を止める。
◇ 呼吸を止めたまま、両サイドに上肢を内転する。このとき、胸中の空気は、腹腔(腹部)に移動させる。(写真4)
写真4
◇ さらに呼吸を止めたまま、再び上肢を外転させて、フィニッシュ・ポジションに戻す。このとき、再び腹腔に移動させた空気を胸腔の方へ一緒に戻す。
◇ そこから、息を吐きながら、スタート・ポジションへ戻していく。
この動作を数回繰り返すと、呼吸運動に連動して胸椎から肋骨連動運動が正常に回復されてくる。内臓機能低下は、必ず脊椎の正常な可動性を乱しているので、このような簡易なエクササイズが有効となる。自分自身で体軸を整えるための、一助となろう。
(つづく)