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お遊びコラム 3

 たった今、アカデミー・アドバンスを終えたばかりの宇佐美健太郎氏からメールが届いた。いわく
「ドラマのワン・シーンを見るようでした・・・・」

 この日(平成16年11月19日)の午前に行われたアドバンス・アカデミーには、前田瑞木氏、亀田圭一氏、浅見芳典氏、渡辺由美氏、宇佐美健太郎氏の5人であった。当然のごとく、通常のカリキュラムからはずれて、『思念』による骨盤から脊柱修正の実技へと化していった。
 それは・・・、ヒーリングの修行を始めている前田氏が、いずれは京都の鞍馬寺まで出向いて、「道を究めるンだい!」などと口走ったことが発端であった。

 前田氏は、ヨガで言う『第6チャクラ(額の部位)』が開いており、霊的なパワーが先天的に高いレベルにある。
「おいらはパワーが強い・・・だから何でも判るンだい!」
という言葉に、浅見氏
「待ちなさい。私こそが、霊的パワーが本来は強いンです。いいですか、私には韓国の僧が背後霊にいる・・・と言われたことがあって・・・」
 話が止まらない。
 というのは、自分の尿管に結石がつまり、ダムのように膨れ上がっていたのを、胸椎の10-12番に指を当てたまま、気合でダムを決壊させた、という実体験に基づく自信に裏打ちされているのである。
 そう、確かに、私の椎骨に触れることなく問題箇所を修正してくれた。「悟りを開いた」のである。同じく亀田氏や渡辺氏にも遠隔治療を実施。後の課題は体軸を常に整えて、邪気を受けないコンディションを維持することにある。
「そうすれば、いよいよ群馬に嫁を迎えられるね!」
と、みんなに言われていたのでした。

 浅見芳典――スポーツ整体ヘルシアの院長であり、群馬県スキー連盟の指導の重鎮であり、いまだチョンガーである。アカデミーのベーシックからはじまりアドバンスまで、群馬からこの六本木まで通い続けること数ヶ月。すっかり仲間と溶け合って、一回りも下の男の子にヘッドロックされたり、ウサケンとタバコを吹かしながらサンバを踊ったりと、すっかり六本木に馴染みきっていたが、後わずかで終了する。
 で、アドバンスの仲間が「嫁さん候補は、この人がいい!」「バカ言え、あの人しか考えられない」と、勝手に盛り上がっていたのである。そんなこんなで、勝手連が勝手に決めた方に、勝手ながら伺ってみた。
「群馬の治療院で、看板娘として新たな人生を歩みませんか?」
「群馬県?いやです。東京以外に、お嫁には行きません!」
と追い払われた。だが、もう一人の勝手連候補者は、
「そうね、タバコを止めてくれるなら、考えてもいいわ!」
と、やや反応する。自然な『天然』に近い返事であった。誰かが、浅見氏に耳打ちした。
「本気です。間違いありません!」
 ニッコリとした浅見氏。「ボクは関係ないっス」と言いつつ、その後1時間は表情が崩れっぱなしであったそうな。
 もっとも、勝手連に勝手にこうしようと決められたもう一人の候補者が、「群馬には行きません!」と思いっきり言った、という話を伝え聞いた彼女は、
「なんだ、二股かけたんですか、プリプリ」
と、可愛らしくおっしゃっていたそうな。それでも、浅見氏が11月をもって終わってしまうと聞くと、
「じゃあ・・・浅見さんには、もう会えないんですかねエ。私も、恐らく年内来ることはできそうにないし・・・」
と、しんみりとしておりました。そんなこんなの経緯(いきさつ)を、なぜかアカデミーの中で話し合っていたのです。
「なんだ浅見さん、もう会えないじゃないですか」「残念ですね」「かかあ天下の群馬より、やっぱ東京で見っけたほうがいいですよ」「まあ、頑張ってくさい」
 無責任な会話が飛び交っていたのであります。そのような背景があって、冒頭の話に戻るのです。

 その日、アカデミー・アドバンスが終了すると、協会非常階段で浅見氏はウサケンとニコチンを身体全体に吸い込んで、
「これだけは、止められねエなあ・・・・・でもなア」
 四方山話をしてから、浅見氏は仲良く宇佐美氏と駅に向かったのです。いつもはパスネットで改札を通過するのに、なぜかこのとき切符を買っていたのです。宇佐美氏は改札で浅見氏を待ちました。と、そこに、現れたのです、彼女が。
「あら?」「おう!」
ふつうはこの会話に、「どや、一緒にメシでも食おうか?」と続くのでしょうが、彼女は急いでいました。走り去っていく後ろ姿を、切符を買ってきた浅見氏が気づいたのかどうか。
「浅見さん、彼女です。彼女ですよ!もう会えないかも、追いかけましょう!」
ウサケンは真剣に言ったそうです。ですが・・・
「いや、(人生って、こんなもんだよ)いいよ。(これが、オレの生きる道なのさ)」
ポツリとひと言つぶやいただけで、遠くに視線を移したまま、とぼとぼと駅の階段を下りていきました・・・・とさ。

註:これはお遊びコラムです。したがって、登場人物は実在の人物とは違い、フィクションであることをお断りします。

                                       平成16年11月記  矢野 雅知